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正論「靖国騒動にみる敗戦責任論」
 靖国神社問題がここ数ヶ月の間に騒がしくなってきている。元はといえば、中国におけるサッカーアジアカップでの暴動に端を発したものであるが、スポーツにおける民族的狂騒が政治問題に飛び火した格好だ。
 靖国問題のポイントは、いまのところ「A級戦犯合祀問題」のようだ。いまのところ、と書いたのは、日本がこの問題で一度折れてしまえば、いずれBC級戦犯についてもかの国が言及してきそうな気配があるからである。 A級戦犯、と呼称すると、「一番悪い人たち」というイメージ広まっているようだが、これは単に分類上の問題で、戦争について指導的な役割を果たした戦犯について「A級」に分類するものとされている。かねてより問題が多く指摘されてきている極東国際軍事裁判であるが、「戦争を起こした罪」を断罪されるのは言語道断として、日本国を敗戦に追い込んだ罪、すなわち「敗戦責任」を追求する場が日本にあって然るべきであったと私は考える。
 真のA級戦犯、それは処刑された人々ではなく、日本国民であった。よく、戦前の日本と現代の北朝鮮が対比されるが、かの独裁国家と、普通選挙と議会により国民の声が国政に反映されていた我が国とを対比させることほど愚かなものはない。当時の日本では、国民が大きな力を持っていた。日比谷焼き討ち事件では、政府の苦渋の外交を理解できない衆愚が暴動を起こし、軍部台頭の契機となった。大東亜戦争勃発前夜においては、朝日新聞をはじめとした愚劣マスコミに踊らされ、好戦的な世論により開戦を後押しした。戦中にあっては、数々の名演説で軍国主義に対する警鐘を鳴らしたの斎藤隆夫を国政から葬ろうとし、翼賛選挙では自らの世論によって肥大化させた国権に屈して議会を有名無実化させた。(この選挙においては、斎藤をはじめとする八十五人の非推薦候補者が当選しており、国民が理性を保って居さえすれば、最悪の事態を免れる可能性はまだ残っていたはずだ。)
 世論を暴走させ、国政を放棄し、自らが増長させた軍部にその全てを託した。戦争において外交を誤らせ、戦略を誤らせ、戦術までをも誤らせたのは日本国民全体の責であった。
 A級戦犯とは、いわば真の戦争責任者である日本国民全体の代表者として敗戦責任を取らざるを得なかった、いわば戦争犠牲者である。東京裁判においても、ドイツでのニュルンベルク裁判においても、受刑者のみに罪をかぶせて、国民全体が自らを免責するという馬鹿げた歴史評価がなされたが、いくら死者に鞭打ったところで、国家を敗戦に導き、ユダヤ人等の他民族を弾圧し、多くの損害を出した敗戦国国民の責任は消せないのである。
国民の代表として犠牲になったA級戦犯は、まさに英霊である。彼らの死を国民一人一人が真摯に受け止め、貴重な「一票」の行方を決める政治判断に生かしていかなければならない。未だこの問題においては、「A級戦犯靖国分祀」などといった馬鹿げた寝言をほざく老害の存在が散見されるが、それこそ自らの戦争責任に目をつぶり、日本を再び誤った道へ導きかねない妄言というべきものである。
 慰霊の場を靖国以外に求めることもよかろう。しかし、我々国民は選挙権を有し国政に関わり続ける限り、どのような場においても、「A級戦犯」をはじめとした、「戦犯」とされた方々の存在を無視し、或いは蔑視し、自らを無関係なものとして位置づけることはできないのである。
(弊紙専属『正論』執筆者:三井狸咆)

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